映画音楽「コルジンキナの冒険」作品59

ロジェストヴェンスキー指揮/ソビエト国立文化省交響楽団

1984 BMG/Melodiya

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ロジェストヴェンスキーによる組曲版6曲(序曲・行進曲・追跡・レストランの音楽・間奏曲・終曲)。全曲で9分強という組曲版だが、ショスタコーヴィチの映画音楽の魅力にあふれている。ソビ文のメリハリの効いた演奏が素晴らしい。ドタバタとした曲想を楽しめる。終曲はどこかもの悲しい合唱が入るが、「ヤーヤ」という歌詞の特徴的な歌い回しが、ロシア語のわからない日本人には「嫌や」という関西弁のような響きに聴こえて、夢にまで出てきそうなほど頭から離れない。無声映画でピアノ伴奏のアルバイトをしていたというショスタコーヴィチだが、第3曲「追跡」は実に格好良いピアノ・デュオの曲。喜歌劇「モスクワ市チェリョームシキ地区」の「モスクワ疾走」に通ずる痛快で疾走系の名曲。ぜひ何度もリピートして聴きたい一曲。いや、やはりこのディスクでしょう。私も奏者として一時期参加させていただいた日本のアマチュア・オーケストラ「オーケストラ・ダスビダーニャ」の団長である白川悟志氏が、同曲のオーケストラ編曲を行っており、長田雅人指揮のもとに熱量のある貴重な演奏を披露している。

ポリャンスキー指揮/ロシア・ステート交響楽団

2003.06 Chandos

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間奏曲を除く5曲版。実に力強い演奏。さすがソビ文の後継。整った演奏と力強さもあって、この曲の魅力を存分に味わうことができる。時にヒステリックなピアノも素晴らしいし、録音の少ない同曲にあってはロジェヴェンか、後を継いだポリャンスキーか、というぐらいで面白い一枚。当サイトにおいては、一旦は「ロシア・ステート交響楽団」と表記するが、ロジェストヴェンスキーによるソビエト国立文化省交響楽団のソ連崩壊後の名称。そのまま和訳するとロシア国立響になったり、また「シンフォニック・カペレ」などの異名もあってわかりにくい。ソ連崩壊後のオーケストラ名の混乱についても、どこかで情報をまとめてみたい。

ムニャツァカノフ指揮/国立キネマトグラフィ管弦楽団

1997.02 Delos

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間奏曲を除く5曲版。やや野暮ったいテンポで、どことない気だるさを感じさせる演奏。バレエ組曲やジャズ組曲に通ずるこうした軽音楽風の曲想の映画音楽において、ロジェストヴェンスキー、ポリャンスキー、ムニャツァカノフとそれぞれに個性のある素晴らしい演奏だと思う。国立キネマの演奏も素晴らしい安定感で、録音も良い。