映画音楽「先駆者の道」(ピロゴフ)作品76/76a

M.ショスタコーヴィチ指揮/ボリショイ劇場管弦楽団

1966 BMG/Melodiya

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これはスゴイ!ほとんど全てにおいて理想的と言っていい素晴らしい演奏。5曲とも、いずれも最高の演奏を聴かせてくれる。ショスタコーヴィチに求めるサウンドをそのまま表してくれている。速い曲も、遅い曲も、ワルツも、まさにこれだという。金管の強奏も実にこの曲に馴染んでいる。スネアをはじめとした前のめりの打楽器、木琴の切れ味も強烈で、キラキラと鳴るグロッケンも素晴らしい。指揮者マクシムの偉業であり、これほどまでに熱量のある演奏はそうはあるまい。なお、コージンツェフによるこの映画は日本でも公開されたようだ。その際の映画邦題が『先駆者の道』。「ピロゴフ」は原題で、同映画の主人公であり実在の医師の名とのこと。

ムニャツァカノフ指揮/ベラルーシ放送交響楽団

1997.04.07 Citadel

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組曲版5曲。いかにもプロパガンダ映画な響きが素晴らしいムニャツァカノフの映画音楽集から。ワルツはどこか懐かしさを感じるような優しい木管の音色と穏やかなテンポが魅力的。全体的にテンポが安定しており堅実な演奏。スケルツォや終曲に微妙にダサい感じがしっかり残っているのは良いこと。

シャイー指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

1998.09.10-11 Decca

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収録はスケルツォと終曲のみの2曲だが、非常に存在感がある。このコンセプト・アルバムの最後を飾るのが終曲であり、このスピード感、壮大でメロディアスかつ戦闘的な曲想には興奮する。個人的には、私が学生時代に車でよく聴いていたディスクであり思い入れ深い。「モスクワ市チェリョームシキ地区」の「モスクワ疾走」と併せて、ピロゴフはドライブに合う曲である。

セレブリエール指揮/ベルギー放送交響楽団

1987 Warner

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組曲版5曲。セレブリエールの映画音楽録音全般に言えることだが、どこか乾いた音色と録音に味がある。やや雑な感は否めないものの、しっかりとした造形。それにしても、第2曲「情景」はいくらなんでも遅い。楽譜を見ると、アレグロの3/4なので、解釈はあるにせよ疾走感がほしいところ。