映画音楽「黄金の山脈」作品30/30a

ロジェストヴェンスキー指揮/ソビエト国立文化省交響楽団

1985 BMG/Melodiya

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組曲版を全曲収録(間奏曲・葬送行進曲・終曲は1トラック)。さすが、我らがロジェヴェン先生とソビ文。有無を言わさぬ迫力と説得力。同曲の決定盤と言える。冒頭のややチープなファンファーレと、やる気のない大太鼓(大太鼓の緩さはロジェストヴェンスキー盤にかかわらずこの曲に共通することなので、こういう表現なのだろう)は、この曲全体の印象にも言えることで、ワルツではこうした世界観が炸裂する素晴らしい演奏。交響曲第3番を引用したフィナーレも面白いが、やはりワルツに魅力が詰まった曲であると言えるだろう。泣けてくるようなハワイアンギターの音色が素晴らしい。かと思えばまるでジブリ映画のような爽やかな三拍子が心地良かったりと、エンターテイメントな一曲である。ショスタコーヴィチの一面を表すとても面白い音楽であり、この曲はもっと知られてほしいと願っている。クラシック音楽には数々の名曲ワルツがあるが、ぜひこれを加えてほしい。ショスタコーヴィチがワルツ王に挑戦すべき名曲だ。オルガン独奏が印象的なフーガも素晴らしくて、ショスタコーヴィチのオルガン付きの管弦楽曲はこれしか知らないが、その運用が面白い。これにスネア、ティンパニをはじめとした打楽器の猛打でテンションが上がらないはずがない。素晴らしい名盤。なお、映画タイトルの邦訳は「黄金の丘」などが見られる。

ムニャツァカノフ指揮/ベラルーシ放送交響楽団

1997.04 Delos

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組曲6曲全曲を収録。ソ連崩壊後のベラルーシの90年代の録音だが、録音状態は良い。偏りのないバランスの良い演奏で、ベラルーシ放送響の確かな技術に裏打ちされた完成度の高い一枚。オルガン独奏のフーガも収録。バランスは編集後につき生演奏ではこうはならないだろうと思えるものの、再現度という点で素晴らしい。「まるで映画音楽のサントラを聴いているようだ」というのが当盤の感想である。

M.ユロフスキー指揮/ベルリン放送交響楽団

1994.06.13-14 Capriccio

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貴重な組曲全曲版。ロジェヴェン盤があれば十分と言ってしまえばそれまでだが、6曲全てを収録している貴重なディスクなので、ぜひ推薦したい。ラッパ、大丈夫か!?と心配になるような演奏だが、このキツそうで不安定な感じはショスタコーヴィチの演奏では度々耳にする。真面目な演奏で好感が持てるが、もう少し遊べる曲であることを考えると全編にわたってもの足りない。

シナイスキー指揮/BBCフィルハーモニック

2003.04.08-09 Chandos

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フーガを除く5曲を収録。フーガが未収録なんて!そんなヒドイ。…と言いたくなるが(このシリーズは重要な曲が欠落している)、演奏自体はこのシリーズに聴かれるとおり、とてもクオリティが高い。BBCフィルの重厚なサウンドと録音が素晴らしい。

セレブリエール指揮/ベルギー放送交響楽団

1990 Warner

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組曲からの抜粋4曲。残念ながらワルツ、間奏曲は未収録。バランスの良い無理のないサウンド。スネアの芯がしっかり鳴っており力強い。特にフーガのスネアの刻みは、いかにもショスタコーヴィチらしい格好良さ。全体的に速めのテンポで、引き締まった演奏になっている。演奏自体は素晴らしい面もあるものの、やはりワルツが収録されていないのは残念極まりない。この曲はワルツからのフーガが聴きどころだと思うので、シナイスキー盤同様に「黄金の山脈」を聴くなら一番に手に取るディスクとはならないだろう。