映画音楽「マクシム三部作」組曲 作品50aと「マクシムの青年時代」作品41(i),「マクシムの帰還」作品45,「ヴィボルグ地区」作品50

アトヴミャーン編曲による映画音楽「マクシム三部作」組曲は、映画「マクシムの青年時代」、「マクシムの帰還」、「ヴィボルグ地区」の三部作の映画音楽からハイライトを収録した映画音楽組曲、ではない。こちらで情報を整理しています。

M.ユロフスキー指揮/ベルリン放送交響楽団

1994.04.28-29 Capriccio

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「マクシムの青年時代」からプロローグ、組曲全曲、「ヴィボルグ地区」から序曲、という現時点(2022年)でのフルラインナップ。また、組曲版のディスクは本ページで紹介する3種しかない。ユロフスキー盤は大変貴重な一枚。そしてマクシム三部作の魅力が全て詰まっていると言っていい。ソ連の当時もの映画なので、マクシム青年が社会主義に目覚めていくプロパガンダ映画というのは内容を見なくても想像できるが、その社会主義的リアリズムが炸裂した作品に付けた音楽として、現代の我々が聴くと清々しいまでのわざとらしく壮大な音楽をむしろ楽しむことができる。「マクシムの青年時代」のプロローグは唯一の録音なので聴き比べができないが、張りのある金管楽器、アタックのはっきりした打楽器、底抜けに明るいソプラノと、軽音楽としての面白さにもあふれた名演。三部作組曲もパリッと引き締まった硬質なサウンドのオケが素晴らしい。速めのテンポでドラマチックな曲想を盛り上げてくれる。カプリッチオの映画音楽録音の中でも特に素晴らしい。東のベルリン放送響の硬くて細いサウンドが生きている。

ムニャツァカノフ指揮/ベラルーシ放送交響楽団

1997.04.07 Citadel

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組曲全曲。前奏曲の合唱が良い。オケが薄くて合唱が前面に出ているので、我々が(勝手に)イメージするソ連のプロパガンダ映画そのものの響きがする。2曲目以降も、まるで昭和の(1961年は昭和36年)メランコリックな音色が雰囲気を出している。革命歌「同志は倒れぬ」の引用もわくわくする。気分を高揚させるのは革命歌の旋律の力か(気分を高揚させるからこそ革命歌であるとも言えるか)。とてもソ連な感じ。

シナイスキー指揮/BBCフィルハーモニック

2002.05.16-17 Chandos

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組曲全曲。BBCフィルの分厚く重いサウンドが、マクシム三部作に新たな魅力をもたらす。贅沢で豊かな響き。弦楽器の厚みも大太鼓の深い音色も素晴らしい。「老いた労働者の死」の大袈裟な盛り上がりは、ここまで豪華なサウンドで演奏してくれるともうまいりましたとしか言いようがない。映画音楽はややチープなサウンドで世界観を味わうのもいいが、こうして管弦楽組曲として説得力のあるコンサート音楽に仕上がっているのはショスタコーヴィチの音楽性の高さゆえだろう。

ムニャツァカノフ指揮/ベラルーシ放送交響楽団

1995.11 Russian Disc

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「ヴィボルグ地区」から序曲。1曲のみ。鋭い強烈なサウンドで、目が覚めるような良い演奏。同じコンビの組曲版よりもアクの強さを感じる。2分に満たない曲だが、十分に魅力が詰まっている。安っぽい銅鑼の音色と勇猛なトランペットが、古臭いマーチ風の曲想、華やかなファンファーレによく似合っている。