映画音楽「忘れがたき1919年」作品89/89a

アドリアーノ指揮/モスクワ交響楽団

2000.03 Marco Polo

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アトヴミャーンによる組曲版の全曲録音。組曲を全曲収めたのは当盤のみと思われる。「忘れがたき1919年」は「ベルリン陥落」に続きスターリン賛美のプロパガンダ映画とされているが、録音の少なさ、日本語文献の少なさもあって、この映画と映画音楽の位置付けを評するのは難しい。第5曲「美しきゴーリキーへの攻撃」はピアノ協奏曲のような構成で、誰もが聴いたことのあるであろうチャイコフスキーPf協1番、ラフマニノフPf協2番のパロディのようにも聴こえる。全体的にも「ベルリン陥落」に通ずるわかりやすい音楽で、ソ連の戦争映画というジャンルものの中でショスタコーヴィチの個性や、ある種の投げやりな曲想を楽しむことができる。当盤は「ベルリン陥落」と併録で、こうして1枚で聴く機会も貴重であろう。なお、モスクワ交響楽団とは1989年に国の支援を得ずに立ち上げられた民間オーケストラとのこと。

シナイスキー指揮/BBCフィルハーモニック

2004.10.12-13 Chandos

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第5曲「美しきゴーリキーへの攻撃」のみ収録。オーケストラがさすがの充実度で、厚い弦楽器とトランペットをはじめとした金管楽器の余裕のある伸びが素晴らしい。録音も良く、アドリアーノ盤で聴かれなかったような繊細な響きを聴くことができる。シナイスキーの映画音楽集は3枚に留まっているが、ぜひ1919年も全曲版の録音を望みたいところだ。

マクシミウク指揮/イギリス室内管弦楽団

1983.05 EMI

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第5曲「美しきゴーリキーへの攻撃」のみ収録。知名度の低い指揮者とオーケストラだが、どこか乾いたサウンドが魅力的。職人的なアプローチと堅実なスコアの再現によって、オケの薄さがむしろ特徴的で面白い。