ミケランジェロの詩による組曲 作品145/145a

M.ショスタコーヴィチ指揮/モスクワ放送交響楽団

ネステレンコ(Bs)

1975.12 Victor/Melodiya

('◎')('◎')('◎')('◎')('◎')

こればかりは、もう別格としか言いようがない。マクシムもモスクワ放送響もネステレンコも、録音史上にこれほどの名演を残してくれたことに感謝。もの凄いキレ味。独唱の主張ある存在感、そして録音も良く臨場感にあふれる。オケも素晴らしくて、私がこれまで聴いてきたモスクワ放送響の録音の中でも一番好きかもしれない。バシバシと決まるアインザッツに、オーケストラの力強く鋭い響きがある。要所で活躍する打楽器の仕事ぶりも素晴らしい。当WEBサイトで紹介する全てのショスタコーヴィチのCDの中でも「これだ!」と特筆すべき究極の一枚なのである。11曲から成り、それぞれ曲名は、真理・朝・愛・別離・怒り・ダンテ・追放者・創造・夜・死・不死。ショスタコーヴィチ晩年の死生観が色濃く表れた曲であり、交響曲の14番、15番に続くテーマを想起される。木琴はもちろんのこと、グロッケン、鐘、ヴィブラフォン(電気モーター付き鉄琴)に加えて、チェレスタ、ピアノといった鍵盤楽器の活用も15番を連想させる。死への行進と、不死への思考。これはショスタコーヴィチ作品後期の最も興味深い面であろう。第11曲「不死」の明るい冒頭は何事かと思えば、ショスタコーヴィチが9歳のときに作曲した旋律が用いられている。ショスタコーヴィチにとっては間違いなく人生の総括を解釈する作品であり、後期の作品と併せて味わいたい至極の名曲である。録音数は少ないが、その死生観の延長にある息子マクシムの指揮によって、このような歴史的な名演が残されていることは、ファンとしてはこれ以上に言うことはない。2枚組の歌曲集であり、国内盤。ライナーは対訳も含めて41ページに及ぶもの。大変勉強になります。これは、それこそコンドラシンやロジェヴェンの全集と同様に、持っておくべき必聴必携のディスク。間違いない。

N.ヤルヴィ指揮/エーテボリ交響楽団

レイフェルクス(Br)

1994.09 Deutsche Grammophon

('◎')('◎')('◎')('◎')('◎')

実に安定した演奏で、DGの優秀録音でヤルヴィとエーテボリの機能性が十分に発揮されている。レイフェルクスの耳心地の良い歌唱も伴奏と融合しており素晴らしい。14番や他の声楽曲でもヤルヴィとレイフェルクスのコンビを聴くことができるが、地に足の着いた堅実な演奏でコンビネーションは抜群。鐘、木琴、銅鑼、鞭といった打楽器の響きも素晴らしく、しっかりと嵌るテンポ感はさすがヤルヴィ。それこそショスタコーヴィチの銅鑼の素晴らしさはヤルヴィの録音で教わった気がするほど。名曲ながら録音に恵まれない同曲において、DGのスタジオ録音で聴くことができるのは幸せなことだ。

ロジェストヴェンスキー指揮/モスクワ放送交響楽団

ネステレンコ(Bs)

1976.04.02 Brilliant

('◎')('◎')('◎')('◎')('◎')

ロジェストヴェンスキーによるライブ録音で、荒々しくもこの曲の深淵に迫る緊張感のある演奏。11曲から成るこの45分ほどの声楽曲は、交響曲の延長にあるかのようなシリアスさを持ち、14番と同様に生と死をテーマにしているが、ロジェストヴェンスキーのダイナミックな演奏はまさにシンフォニックで深みがある。ロジェストヴェンスキーはこのように貴重な録音を残しているが、当盤の録音状態は良いとは言えない。それでも研ぎ澄まされた鋭いサウンドは感じることができる。スタジオ録音や他の演奏も記録されていればぜひ聴きたかった。オーケストラ表記は英語で「USSR State TV and Radio Symphony Orchestra」。通称モスクワ放送響の当時名「全ソビエト連邦放送中央テレビ交響楽団」であり、現在の「チャイコフスキー記念交響楽団」。当サイトでは慣例的に全ソ放送TV響は「モスクワ放送交響楽団」と表記しておく。

ノセダ指揮/BBCフィルハーモニック

アブドラザコフ(Bs)

2005.04.05-07 Chandos

('◎')('◎')('◎')('◎')

綺麗にまとまった一枚。独唱も伴奏も実に丁寧で、縦線の揃ったアンサンブルが心地良い。どっしりと重苦しいイメージのある同曲だが、渋味のあるサウンドと明瞭なアンサンブルとシャンドスの透明感ある録音で聴きやすく、なお決して軽くはならない。

M.ユロフスキー指揮/ケルンWDR交響楽団

コチェルガ(Bs)

1996.02.21-23 Brilliant/Capriccio

('◎')('◎')('◎')('◎')

ユロフスキーとケルン放送響(WDR)の声楽曲シリーズから、ミケランジェロ組曲。WDRの硬質で密度の高いサウンドが魅力的で、ミハイル・ユロフスキーの生真面目なアプローチとよく合っている。マクシムやロジェストヴェンスキーのような激情型の演奏ではないものの、ユロフスキーの一連の録音と同様に、冷静なアプローチに好感を覚える。