カンタータ「我が祖国に太陽は輝く」作品90

コンドラシン指揮/モスクワ・フィルハーモニー交響楽団

1967 Melodiya

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いかにもなタイトルでワクワクしてしまうが、単なるプロパガンダ曲として演奏機会が失われてしまうのはあまりにも惜しい。この12分ばかりの管弦楽伴奏付合唱曲の中には、ショスタコーヴィチらしいオーケストレーションによる魅力が詰まっている。強奏部でのスネア、銅鑼、そして木琴のいざないは、ショスタコーヴィチならではだろう。今日、この曲がほとんど演奏されず、またCD化の機会がないことが残念でならない。ロシア語歌唱なので、歌詞の内容がわからない我々一般の日本人には気にならないのかもしれないが、当時の政治体制はああだったわけで、「それはそれ。これはこれ」で音楽を純粋に楽しみたい。

P.ヤルヴィ指揮/エストニア国立交響楽団

2012.04.18-20/Live Erato

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実に堂々たる演奏で、このプロパガンダ曲を現代のオーケストラ、録音で聴けることが大変喜ばしい。パーヴォ・ヤルヴィ、エストニア響の手堅い技術力には感服する。このドラマチックに構成されたカンタータを現代に甦らせ、そして感動的な名演として記録されたことは嬉しい。コンドラシン盤、イワノフ盤は録音の古さもあり聴こえてこない部分もあるが、当盤は細部まで分離されて、緻密なオーケストレーションを存分に味わうことができる。偉大な父ネーメ・ヤルヴィと比較することに意味はないと思うが、パーヴォの構築する重厚な世界は、父とはまた異なる魅力を持っている。

M.ユロフスキー指揮/ケルンMDR交響楽団

1996.03.06-08.06 Capriccio

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貴重な「我が祖国に太陽は輝く」の録音。ケルン放送響の渋い響きが素晴らしい。ドイツのオケがスターリン讃美の曲を演奏しているのも何とも面白いものだが、やはりショスタコーヴィチのドラマチックな曲作りが現代の演奏にも十分に耐え得るものであり、プロパガンダ曲として切り捨てるのがもったいない名曲。かつては、ユロフスキーはやや軽めでそつのないまとめ方をする指揮者だという印象もあったが、オーケストラによってだいぶ印象が変わる。当盤はケルン放送響の抜群のサウンドと、ユロフスキーの冷静で知的なセンスが見事に結実した演奏。

イワノフ指揮/ソビエト国立交響楽団

1961 Russian Disc

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61年の録音であり、コンドラシン盤よりも古い。まさに「当時モノ」。冒頭の少年合唱にはある種の感動を覚えるほど。ソビエト国立響の芯のある音色が素晴らしい。真っ直ぐなサウンドと生真面目な演奏に好感が持てる。ただし、録音には難がある。ヒストリカル音源として聴くべきか。