交響曲第3番 変ホ長調 作品20「メーデー」

ロストロポーヴィチ指揮/ロンドン交響楽団

1993.02 Warner/Teldec

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疾走感が素晴らしい。オーケストラの技術的水準が極めて高いので、安定したドライブ感が心地良い。緩急の付け方も爽快。ロンドン響の豊かでありながら鋭さも併せ持った贅沢な響きが何より魅力。大袈裟なクレッシェンドなど、ダイナミクスの遊びも楽しい。曲想は分裂気味でもあるが、統率の取れた安定した演奏。ドラマチックな構成で、速めのテンポと歯切れの良いサウンド、豪華に鳴り響く金管楽器、まるで映画音楽のような盛り上がりを見せる。スネアの軽快ながら骨太な音色と、オーケストラを先導するかのような主張が素晴らしい。そして、終盤の合唱が入ってくるところなどは何度聴いても興奮してしまうようなカタルシス的浄化がある。堂々たる名演であろう。ともすれば取って付けたようなラスト数小節のコーダ(黄金の山脈)も、素晴らしく自然に音楽の流れの中で華やかにフィナーレを飾る。トラックは親切に六つに区切られており、聴きやすい。ロストロポーヴィチの全集の中では、14番の特殊性を除けば最も好きな一曲であり、3番のベスト盤と言って間違いないだろう。

キタエンコ指揮/ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

2004.01.20-24,07.13-17 Capriccio

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キタエンコ全集の2番と同様に素晴らしい演奏で、優秀な録音と相俟って感嘆する。アンプのつまみを思いきって上げて、この音質が運んでくる迫力に酔いしれたい。オケもとても良い。やる気満々の金管が魅力的で、トロンボーンなどロジェヴェンを髣髴とさせるようなぶりぶりをこれでもかと出してくれる。テンポ感覚も抜群で、非常にコントロールの効いたメリハリのある演奏を聴かせる。打楽器も好演。スネアのソロも16分音符を強調したものになっているし、力任せにならないロールの響きも素晴らしい。ティンパニもどっしりと構えた深い音色。そして合唱。まるで映画音楽のように明快に盛り上がるこの感動。ドイツの名門オケは数あれど、いまいち影の薄かったギュルツェニヒ管がここまでのアンサンブルで劇的な演奏を披露するとは。同じケルンのWDR(旧ケルン放送響)と聞き比べても見劣りしないばかりか、むしろこの全集では金管の底力を聴かせてくれる分、いくつかの録音はバルシャイ盤に勝る。トラックは六つに割ってある。…しかし、ケルンってすごい町だ。全集の録音が2004年7月に集中しているのだが、それにはライブも含まれるため、この街はショスタコ濃度が極めて高かったんじゃないのか。

M.ザンデルリンク指揮/ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団

2019.01.12-18 Sony

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ザンデルリンクの交響曲全集、本当に素晴らしい!3番は情緒的な曲だが、客観性をもってこの曲のドラマツルギーを表現した一枚として、私はザンデルリンク盤を強く推したい。2番、3番は他の交響曲に比べて演奏機会が極端に少ないと思われるため、ライブ音源に出会うことは少ないが、マクシムのような感情的な演奏が魅力である一方、きちっと組み上げられた隙のない演奏も楽しい。であるならば、全集制作の一過程ではなくこの曲にも真剣に向き合うべきなのだが、このザンデルリンク全集の「優しさ」と「緻密さ」が表れた一枚で、素晴らしい。演歌のようなドラマチックさも恥ずかしげなくコントロールされた表現に収まっている。ダイナミクスの妙は言わずもがな、アッチェルもリットも格好良い。オーディオ効果も十分で、オーディオ・チューニング作業もとても楽しい。バシバシと決まる大太鼓と吊りシンバル!低弦の格好良さも比類ない。やはり3番は、ドン!バン!と決まるのが格好良い。全集全般に言えるがスネアの仕事ぶりが実に素晴らしく、バランスを崩すことはないが、テンポはやや食い気味で常に存在感にあふれている。音は深めで柔らかいが、音量が大きい。音色の良さでオケ全体に溶け込んでいる。打楽器ではトライアングルのギンギラの音色も素晴らしく、私の好みにぴったりです。ザンデルリンク全集、始まりの一枚だが、1番(34分)、2番(16分)、3番(28分)と実に世界観が作られており、どっぷりと嵌ってしまう(そして、ショスタコーヴィチの世界観に入り込みすぎると体調を崩す)ので気を付けなければ、というディスク。なお、それなりの大音量で聴いていたら、洗い終わったお皿の山が崩れました。さて、次は第4番。わくわくしてきた。

ロジェストヴェンスキー指揮/ソビエト国立文化省交響楽団

1983 BMG/Melodiya

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やや不格好な歪さがあるが、そこまでやるか!という押しの強い演奏で、この特殊な録音状態(決して褒め言葉ではないソ連初のデジタル録音)と相俟ってもう大好き。テンポは遅めに設定され、重量感あるサウンドに圧し潰されそうになる。ロジェヴェンとソビ文に「迫力」という言葉を使うのはちょっと違う気がするが、「迫り来る力」という意味ではまさにそうとしか言いようがない。金管のぶりぶり、打楽器のデッドな打ち込み具合も素晴らしい。ショスタコーヴィチらしいオーケストレーションの薄さ―そう、演奏してみると丸裸にされたような居心地の悪さがある、あの薄さのことである―が、致命的な安っぽさを生むことはなく、むしろ「これでどうだ!」と言わんばかりに各楽器が主張してくる。中間のスネアのソロはかなり遅めで、もの凄い打ち込み。いいのか、本当にこれで。ピオネールなのか?異常なまでのテンションで全曲を駆け抜け、いささかも緊張感を損なうことはない。さすがはソビ文。当然、聴いている方もかなり疲れる。

スメターチェク指揮/プラハ放送交響楽団

1974.09 Praga

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なんだこれは!スゴイぞ!スメターチェクとプラハ放送響との録音とあって、俄然、興味が湧く一枚。聴けば聴くほど魅力的。録音が良いのか悪いのか、金管がギャンギャンと響く。節操なく鳴り響くこの金管楽器、どこか信頼の置けないレーベル、…いや、しかし、この暴力的とも言える演奏の前に思わず屈してしまうような気分。合唱のエネルギーも凄まじい(チェコ語に置き換えているとのこと)。実に充実した演奏なのである。こういうスタイルでの演奏を求めるなら、このスメターチェク盤がよい。これを聴いてしまうと、そうそう他の録音で満足できなくなってしまう。トラックは四つ。このディスクは、スメターチェクの3番の他、コシュラー(プラハ放送響)の「十月革命」、スロヴァーク(スロヴァキア・フィル)の「ステパン・ラージン」という実に魅力的な内容で、必携。

M.ショスタコーヴィチ指揮/プラハ交響楽団

2006.02.28,03.01/Live Supraphon

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ショスタコーヴィチの初期交響曲に関しては、2番が良いと大抵3番も良いというのが実感するところ。抜群の2番を振ったマクシムは、やはり3番も素晴らしい。速いところで崩れるのが難点だが、それはもう言ってはならぬこと。マクシムの2、3番の魅力はその破天荒なテンションの高さにある。これまで、どちらかというと冷静に積み上げていくタイプの演奏の方がこの曲には相応しいだろうと考えていたが、マクシムの演奏を聴くとそうとも言えないことがわかる。どういう感情移入の仕方なのかはわからないが(革命とかメーデーとかはそんなに関係なく)、でも感情的。プラハ・フィルハーモニー合唱団が歌っているが、オケの音色とは違ってとても綺麗。

井上道義指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団

2018.03.09-10/Live Exton

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井上道義と大阪フィルによるエクストンからのシリーズ。ライブ録音。当日はバーバーのPf協を前プロにしての2番、3番という(井上氏曰く)マゾヒスティックなプログラム。井上道義と聞いて何か特別なコッテリとしたイメージを持つのは意外と間違いで、大阪フィルの実力を引き出しながらスッキリと機能的にまとめ上げており、我が国きっての名指揮者としての手腕を感じさせる。この第3番の演奏も、第2番に引き続いて地に足の着いたじっくりと聴かせるもの。合唱団はヒロイックとも言えるような格好良いもので、現代の日本でこのような第3番を聴くことができるのは素晴らしい。大阪のフェスティバルホールでのライブ。当日参加できた人々は幸せである。

ウィグレスワース指揮/オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団

2010.10 BIS

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2-3番の録音をもって全曲録音が終了したウィグレスワース。2番と同時に録音され、演奏の傾向は同じ。不気味なほどの冷静で整然とした演奏になっている。3番は全体的にテンポが速めに設定されており、2番よりはわかりやすいメロディと合唱のためか勢いや流れを感じることができる。音質が素晴らしいので各楽器の鳴りを十分に感じられ、音響的面白さを味わうことができる。スネアはフィールドドラムのような深胴のドスドスと太い音色が鳴る。壮大すぎる合唱には思わず違和感を覚えるが、渋い弦楽器の響きとミシッと中身の詰まった管楽器の音色もあって荘厳。トラックは何と七つ。素晴らしい。

N.ヤルヴィ指揮/エーテボリ交響楽団

1996.12 Deutsche Grammophon

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このディスクをもってヤルヴィの交響曲全曲録音が終了。時期的には1996年なので、2番よりはその他の録音と近い。13番のあと。相変わらず快速で気持ちの良い演奏を聴かせてくれる。やはりヤルヴィのショスタコーヴィチはスネアが魅力的で、テンポ感、リズム感が素晴らしく魅力的。ヤルヴィはソビエト出身の指揮者で、ロシア魂を受け継ぐ者ではあるのだが、こういったプロパガンダ的歌詞を持つ曲に対しても冷静に取り組む。アッサリと。DGの録音はエーテボリ響の実力を引き出しており、クレバーなサウンド。ぶんぶんと低音が鳴るのも良いし、バリバリと響く金管のバランスも良い。遠くに鳴っている合唱は録音・編集上の特性があるのかはわからないが、薄くてサントラ的。最後、これらを突き抜けるコーダは格好良い。

ヴァンスカ指揮/BBCスコティッシュ交響楽団

1998.08.19/Live BBC

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BBCから意外なところで名演を発見。ヴァンスカのショスタコーヴィチというのはこのディスク以外には知らないが、これは素晴らしい名演に出会えた。同月に行われたベートーヴェン第7番のライブとのカップリングで、ベト7のあとに流れる「メーデー」の何と格好良いことよ!スピード感があり、ロストロ盤に近い雰囲気を持つ。いかにもクラシック音楽といった風格さえ感じる合唱の広がりは素晴らしく、オーケストラも好演。オーケストラはさすが職人的BBCスコティッシュ、めまぐるしいテンポにも充実した濃密なサウンド。高速パッセージの弦楽器も、スコアを見ればきつそうな管楽器も、プロとしての余裕を見させてくれる。打楽器もここぞとばかりにバシバシと決めてくれる。スネアは深胴のどこどこと深い音が響くのが思わずニヤリとさせられる。影の主役たる大太鼓も実に良い。トラックは四つ。単一楽章を四つに分けるのは邪道という向きもあると思うが、せっかくのデジタル媒体。家で聴くCDは、コンサートのように一期一会で最初から最後まで聴くわけでもないので、分けてもらうと聴きやすい。

V.ペトレンコ指揮/ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団

2010.06.22-23 Naxos

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軽いサウンドで美麗、まるでブレないペトレンコ全集。第三世代のショスタコーヴィチ演奏とも言えるが、ペトレンコの個性なのだろう。こうして紐解いていくショスタコーヴィチの世界は面白い。基本的にはサクサクと小気味良いテンポで進んでいくペトレンコだが、ピオネールの行進はじめ随所で極端に遅いテンポを取る。ペトレンコ独特のショスタコーヴィチ世界の中で、明瞭な響きを放つ打楽器もまた魅力的。1,3番を収録した当盤ジャケットのベレー帽を被ったドミトリーが猫を膝に乗せている写真も良い。

インバル指揮/ウィーン交響楽団

1990.11.28-30 Denon

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実によく整った演奏で、3番をこのような演奏で聴くことができるのはとても新鮮で貴重。テンポが遅すぎるのが個人的には違和感があるが、細部の響きまで耳を傾ければ、このテンポの中で成立している音楽の美しさがある。ウィーン響のクリアかつ豊かなサウンドも良い。荘厳な合唱もこの演奏に合っている。あまり多くの録音を聴くことのできない曲ではあるが、インバル盤もこの曲の一つの回答であろう。

バルシャイ指揮/ケルンWDR交響楽団

1994.09.30-10.03 Brilliant

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地味に聴こえがちだが、ミシミシと密度の高い充実したサウンドは、このコンビによる全集の特徴だ。録音も良く、低音の重厚感が素晴らしい。精緻に構成された生真面目な演奏。ピオネールの行進などアレグロは速めのテンポを取っているが破綻することはない。交響曲第1番と同時に録音されたようで、ディスクには1,2,3番が収められている。

コンドラシン指揮/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

1972 BMG/Melodiya

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速めのテンポで、その解釈に有無を言わさぬ説得力がある。コンドラシンらしい鋭いサウンドとテンポ感だが、録音の難もあって、ところどころで薄くなるのは惜しいところ。突き抜けてほしいところで音が届かない。個人的には第3番の合唱はコンドラシン盤がとても好きで、70年代初頭のソビエトのオーケストラのサウンドとよく合う。豊かな声量で、迫力も十分。勇ましく力強い。スネアのソロが良い。

ハイティンク指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

1981.01.25,27-28 Tower Records/Decca

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ハイティンクの全集から。2番と同じ日程で録音されており、その性格も同様。相も変らぬ生真面目でストイックなサウンドに心惹かれる。例えて言うならば、クラスの中で成績もスポーツも優秀な陽気な人気者というよりは、自らに厳しい鍛錬を課して無駄を省いて突き進むような人を寄せ付けない実力者と言おうか。私の勝手なこうしたハイティンクのイメージは、3番も同様で、実に真摯に取り組まれた演奏。

コフマン指揮/ボン・ベートーヴェン管弦楽団

2005.11.28,12.06 MDG

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コフマン全集らしい丁寧な演奏で、独特のサウンドの薄さは魅力的とも言える。実に真摯に取り組んだ演奏に聴こえる。全集はオケの薄さもあってスネアのサウンドが明確に届いてくるが、職人的な技術で実に安定したもの。3番もスネアが肝になる場面が数多くあるが、第二の指揮者のようにしっかりと進行してくれる。相変わらず派手さはなく、田舎っぽい響きが特徴で、3番後半の目が覚めるような強烈さは感じられない。

井上道義指揮/サンクトペテルブルク交響楽団

2007.11.03/Live Octavia

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日比谷公会堂での交響曲全曲演奏プロジェクト初日、1番、2番に続いて最後の曲目はこの3番。相変わらずデッドな響きでストレートなサウンド。サンクトペテルブルク響は、戦時下のエリアスベルクのレニングラードで有名な放送オケだが、当時レニングラード・フィルと比べても実力差はあり、こうして現代の録音を聴いてもサウンドの弱さ、ソロの技術不足は否めない。一方、日比谷公会堂の響きと録音の方向性によって、残響に守られないオケのダイレクトなサウンドは魅力的で、パーカッシブなリズム感が良い。グロッケンや銅鑼、トライアングルなどの金属系打楽器のギラギラした響きが個人的にはとても好きだ。

ネルソンス指揮/ボストン交響楽団

2022.10/Live Deutsche Grammophon

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ネルソンス交響曲全曲録音のラストを飾った2,3,12,13番の3枚組から。2番の録音から約3年後だが、印象は近い。3番のほうがやや散漫な印象で2番のようなスマートさはない(ん?2番がスマート?)。整った弦楽器はさすがとしか言いようがない。3番という曲がそうさせるのか、管楽器はやや乱れる。スネアは毎度ながら職人芸を聴かせてくれる。装飾音符の軽快なパラパラ感が神業のように思える。なぜこんなに軽やかに、パラパラしているのにしかも機械的ではなくウェットに。凄い。各楽器のソロも聴き応えがある。ショスタコの遊び心(=世間では実験的と言う)も十分に表現されており、まるでクラシックの枠を超えたポップな響きが面白い。合唱が入ってからは何とも煌びやかに。録音がとても良いので分厚い低音と大太鼓が心地良い。トラックは四つ。

アシュケナージ指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

1992.03 Decca

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硬質で直線的な響きが魅力的。まるで吹奏楽の演奏を聴いているかのよう。大太鼓はわざわざミュートしたような打撃音。ティンパニもヤマハ系の音色に感じる。なんだか嬉しくなってしまう。スネアの自己主張も激しい。全体的には、その響きの薄さゆえか、若干チープさが漂う。が、この曲にはこれぐらいの安っぽさがあってもいいか。スネアのソロ部分はテンポが遅くもたつく。こうした極端なテンポの操作が人工的な味付けを感じさせる。トラックは四つ。

ヤンソンス指揮/バイエルン放送交響楽団

2005.01.10-12 EMI

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ヤンソンス全集から。EMIの素晴らしい録音。バイエルン放送響の実力を感じられる演奏で、一音一音の充実したサウンドに贅沢な響きを感じる。とは言え、特段に何か個性的なものがあるわけではないのは、ヤンソンスの全集に感じられるところか。

カエターニ指揮/ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団

2006.06 Arts

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2000年から始まったカエターニの全集録音の中では、この3番と14番が最後になる。のびのびとした開放感のある演奏だが、どこか散漫な印象も否めない。カエターニ全集らしい軽やかで美しいサウンドは、相変わらず素晴らしいもの。キレの良いテンポ感も魅力的。トラックは六つ。セッション録音と思われる。

タバコフ指揮/ブルガリア国立放送交響楽団

2013.11.25-29 Gega New

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タバコフの交響曲全曲録音第8集。3番と14番という何とも魅力的な組み合わせでのリリース。相変わらずオケが苦しい。洗練とはほど遠い原色サウンドと響かない録音が特徴的だ。ピオネールはそのテンポで行くのか!?高速テンポの中でサクサクとスネアが健闘している。それぞれのパートがあちこちでまとまっておらず、元々、分裂的な曲ではあるものの、30分全てを集中して聴くのは容易ではない。

スラドコフスキー指揮/タタールスタン国立交響楽団

2016 Melodiya

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スラドコフスキーの全集から。3番だけで1枚のディスクに収められている。トラックは一つ。ローカルなサウンドでバランスが悪いが、この曲には合っているように思う。音楽がなかなか流れていかないが、流麗さとは無縁のゴリゴリと弾き込む弦楽器、なかなか前に進まないテンポ案はこの全集の特徴でもあるだろうか。スネア・ソロはまったく主役になりきれておらずブレブレだ。弛緩する中間部を経て、後半はなかなか良い。困難な旅路の末にようやくここまで辿り着いたか!という不思議な達成感さえ得られる。合唱が聴こえてくると感動する。

スロヴァーク指揮/スロヴァキア放送交響楽団

1990.01.20-26 Naxos

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ナクソス初期のショスタコーヴィチ全集から。極めて慎重なテンポで演奏しつつ、時折思い切ったような加速と切れ味がある。全体的には全集先般に言えることだが音があまりにも鳴らずに薄く、そしてまたバランスも悪い。後半の合唱が入ってきた辺りからは、硬質な響きがなかなか味があってよい。