交響詩「十月革命」作品131

N.ヤルヴィ指揮/エーテボリ交響楽団

1988.05 Tower Records/Deutsche Grammophon

('◎')('◎')('◎')('◎')('◎')

ヤルヴィの小気味良いリズム感と快速テンポ、そして小太鼓の職人芸が素晴らしいディスク。ヤルヴィの11番、12番が好きな向きにはこれぞ決定盤というところであろう。オーケストラの凸凹もなく、例えばコンドラシンのライブ盤のような刺激には欠けるところもあるが、華麗でスピード感あふれる演奏は好感度が極めて高い。なお、この曲は作品番号131(1967年)とあって、後期の作品。交響曲で言えば13番までは書き上げており、残すところ14番と15番。何でも、30年前の映画「ヴォロチャーエフ要塞の日々」(1938年)を観る機会があって、インスピレーションを得たとのこと。パルチザンのテーマが引用されている。委嘱作品ではあるが、ショスタコーヴィチらしいオーケストレーションが楽しい一曲で、12分30秒でしっかりとショスタコーヴィチの格好良さが味わえる。

広上淳一指揮/ノールショピング交響楽団

1993.09 Tower Records/BMG

('◎')('◎')('◎')('◎')('◎')

BMGの名盤をタワレコがリマスタ。切れ味のあるサウンドが魅力的で、同曲ではヤルヴィ盤との双璧と思います。当盤以外の録音は聴いたことがないが、スウェーデンのオーケストラ、ノールショピング響のカツカツと抜けの良いスネアが何より素晴らしくて、クリアな響きが魅力的。一方、しっかりと無骨な力強さを聴くことができ、ショスタコらしい。交響曲第11番を髣髴とさせる切れ味のある演奏に好感が持てる。なお、当盤メインの交響曲第5番も素晴らしい。総じて音が短めで、ハキハキした演奏。響きが非常にクリアで、整ったアンサンブルなどノールショピング響の高い技術力が伺える。

コンドラシン指揮/モスクワ・フィルハーモニー交響楽団

1967/Live Melodiya

('◎')('◎')('◎')('◎')('◎')

凄まじい爆演であり、それ以外にどういう言葉で表せばいいのか。惜しむらくは録音で、これは状態がかなり悪い。しかし、資料的価値という以上の素晴らしい熱量の演奏がここにあるわけであって、コンドラシンらしい引き締まったテンポと、凄まじいアンサンブルで突き抜ける様子は他には聴けない。爆裂するスネアの裏打ちは、心より支持したい。何度目だろうか、というコンドラシンの全集だが、メロディヤからの出版とあって興味津々で入手した。基本的には、一柳富美子先生の解説が貴重なBMG盤を愛聴しており、よほどのリマスタを施してくれていない限りは他レーベルからのものはいいかな、と思っていた(なお、ショスタコーヴィチの基本的な知識は、コンドラシン全集の解説と、井上道義の交響曲全曲演奏の際のパンフレットが充実しており、これで十分ではないかと思っている)。「またコンドラシンの全集が出るのかー」と思って覗いたHMVのHPで「ディスク2:交響曲第4番、交響詩《十月》」!目を疑った。コンドラシンが「十月革命」と。CD初出である。まさか、コンドラシンの「十月革命」が聴けるとは。そして、いや、参りました、コンドラシン様。

ノセダ指揮/BBCフィルハーモニック

2005.04.05-07 Chandos

('◎')('◎')('◎')('◎')('◎')

骨太なしっかりとした演奏。堅実、安定感ある演奏で、オーケストラの機能美に納得できる一枚。この土臭さと健全な鳴りっぷりは素晴らしい。シャンドスの録音であり、どこかヤルヴィと比べたくなる点もあるが、サクサクとした疾走感ではヤルヴィ、土臭い濃密さで言えばノセダか。

ドゥダロヴァ指揮/モスクワ交響楽団

1982 Olympia/Melodiya

('◎')('◎')('◎')('◎')

プロコフィエフの「革命三十周年記念祝典詩曲」(それにしてもプロコフィエフはしれっとこういうのを書く…)、エシュパイの「レーニンは我らと共に」、そして我らがショスタコーヴィチの「十月革命」と「若き親衛隊」を収めた80年代の企画ディスク。見よ、この赤いジャケットを。これだよ!ドゥダロヴァは当時のヨーロッパには珍しい女性指揮者。Moskow Symphony Orchestraと表記されるオケの詳細がわからないのだが、ソ連的なサウンドが炸裂する様は実に心地良い。スネアもクリアな録音でバシバシと決めてくれるが、いよいよ終盤の裏打ち、ここまであの勢いで来て、そこで急に裏方に回るとは!

シュウォーツ指揮/シアトル交響楽団

2000.02 Naxos

('◎')('◎')('◎')('◎')

11番でも素晴らしい演奏を残しているシュウォーツ。シアトル響の渋い響きと堅実なアンサンブル、骨の太いスネアが魅力的。同コンビは1995年にも11番で名演を録音しているが、シュウォーツが「十月革命」を録音したのならばぜひこういう演奏を聴きたい、という期待に違わぬもの。併録されている「ステパン・ラージンの処刑」もシリアスでドラマチックな演奏であり、このコンビのショスタコーヴィチ演奏は好きだ。

コシュラー指揮/プラハ放送交響楽団

1977 Praga

('◎')('◎')('◎')('◎')

ソビエト勢とも欧米とも異なるどこか土臭い響きが魅力的な一枚。当ページで他に挙げているベスト盤と比べると、ダイナミックな鳴りには欠けるが、染み入るようなプラハ放送響の音色はクセになる。

アシュケナージ指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

1992.04 Decca

('◎')('◎')('◎')

アシュケナージはサンクトペテルブルク・フィル、N響との録音も含めて全集を完成させたが、これらの録音の中ではロイヤル・フィルのサウンドが際立って輝かしく感じられる。キラキラしたロイヤル・フィルの響きが、この曲に良い効果をもたらしている。

バティス指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

録音年不詳 El Disco Cultura

('◎')('◎')

バティスがこうも惰性的でつまらない演奏になるとは想像もできまい。まず、遅くて鈍い。歯切れの悪いテンポ感。打楽器は沈没している。個人的には、おそらく私が初めて十月革命を聴いたのはこのディスクで、ショスタコーヴィチを聴き始めた頃にメイン収録の5番のついで程度の関心しかなかったのだろう。この曲については完全に聞き流していた(ヤルヴィに出会うまでは)。長らく、この紫とピンクのジャケットのCDは私のCD棚のどこかで埋もれていた。なお、5番はインパクトのある演奏。当盤ライナーには録音年の表記がないが、異盤のASVでは1990年のようだ。